第5回 岐阜県地域森林監理士養成研修を開催しました。
この日は、鹿児島県の製材会社で総務経理部長を務められている、新永 智士氏に経営手法について講義をいただきました。
まず、“ 経営 ” とひとくちに言っても、会計経営・組織経営・人事経営、その他いろいろな経営があります。
新永氏は、会社での総務経理部長の仕事以外に、岐阜県立森林文化アカデミーや、鹿児島大学で教鞭を取られており、また、大学卒業後の経歴では、金融系コンサル会社、山側の立場にある林業会社を経て、現在製材(加工)の仕事を経験されており、幅広い視点で経営を考えられている方です。
そんな新永氏が言われるのは、経営を考える時に大切なことのひとつは、「立ち位置を明確にする」こと。
林業界で考えると、例えば、山側は山づくりの観点で今出荷したいと考える木材(品質、規格及び量)は、川下側で欲しい木材(品質、規格及び量)ではないということは想像しやすいと思います。
このように、立ち位置によって考え方の軸は変わるので、自分はどの立ち位置で考えているのかしっかり認識しないとブレるということです。
また、林業界はお金の流れや流通が複雑で捉えづらいので、細分化して考える意識が必要です。
このようなことを踏まえ、この日は、新永氏が鹿児島大学と開発した林業カードを利用して会計経営を学びました。
まず、どんな立ち位置なのか?この日の設定は、研修受講者が林業会社経営者です。
以下の条件で、カードを使って新規会社の立ち上げを検討します。
・従業員は、作業班1班、事務職員2名、役員1名。
・導入機械は、作業システムを自由に検討して何を入れてもよし。
機械が決まったら、次は経費の計算です。
機械費、人件費、緒経費、さらにどのくらい利益を出したいのか、それぞれの金額を合計して、年間に必要な金額を計算します。結果、受講生皆5-6千万円と大きな数字になりました。
では、その金額を売り上げるにはどれだけの仕事量が必要なのか。
どれだけの面積の山が必要となり、作業員は1日あたりどれだけの量の木を山から出さないといけないのか。といった数字に割り戻していきます。
こういった複雑な計算も、準備されたひな形があれば容易にできます。
計算をすることによって、何千万円という捉えずらかった金額が、日頃よく話題にしている数字と連動しました。この日は時間がなく、ここまででしたが、さらに機械を変えてみたり、もう少し給料を上げたらどのような数字になるか、何度も計算をすることで、数字を捉える感覚が身に付きそうです。
日頃管理をする立場にある受講生も、こういった計算は誰かに任せており、結果の数字は把握しているが、頭の中で連動できていないといったことがあるようでした。
今回使用したカードの教材は、なんと開発に3年もかかったそうです。
それは、複雑に絡み合った林業界での糸を解くような作業に要した時間とも想像できます。
しかし、一旦ひも解いて整理すると、意外と単純であるようにも見えてきます。
今後、いろいろな場面で、複雑に見える問題を解決しなければいけない受講生とって、多くのヒントを得た講義でした。